『
経済学的思考のセンス』の大竹文雄先生が編者となって、同書と同様にインセンティブや情報の非対称性などの経済理論でもって身近な問題から社会問題まで読み解いた本です。
雑誌連載をまとめた本ということもあって各個の記述は『経済的〜』よりさらに薄いのですが、その分軽い読み物として読めます。『経済学的〜』や『
ヤバい経済学』を読んだ人には物足りないかもしれませんが、これを読んで面白いと思った人は先に挙げた2冊が超おすすめ。
執筆当時フランス国立図書館長であった著者がグーグルブックサーチに文化的側面から批判を投げかけています。
グーグルブックサーチが発表された際、日本での反応は「Googleすげー、でも著作権は?」的なものが多かったような気がします。しかし本書ではGoogleがあくまで営利企業であること、そしてその検索アルゴリズムから問題点を指摘していきます。例えば検索順位の決定がスポンサーの意に沿ったものであったり人気順であれば、文化的価値は後回しにされてしまう、あるいは特定の意見や思想に偏ってしまうというふうに。根本にあるのはファシズムへの警戒。実際ファシズムを経験したヨーロッパならではの発想ですね(あれ?日本は?)。
確かに図書館では、単純に分類コードとアルファベット順で本が並べられているわけでそこには商業的思惑は入り込む余地がないわけです。一面不便とも言えるかもしれませんが、これはこれで多様性の担保になっていますよね。そういう意味ではグーグルブックサーチは図書館たりえないというのはなるほどなあという感じです。
本書でもヨーロッパ独自の取り組みが紹介されていましたが、ユーザビリティと多様性の確保をいかに両立させていくかがこの闘いのキーポイントではないでしょうか。
フランス国営ラジオ局のキャスターがコモディティ生産の現場、市場について長年の調査の記録をまとめたもの。そしてそれだけではなく、付録としてフェアトレードに対する皮肉に満ちた批判も収録されています。
本文で述べられるコモディティ市場の崩壊の原因は、単にグローバル経済という漠然としたものではなく、例えば生産国の国策による増産であったり綿花の場合はアメリカの保護政策であったりと様々な要素が重なり合っています。それだけに最後のフェアトレードに対する批判が説得力を持ってくるわけです。
しかし、フェアトレード後進国の日本ではその議論がいまいちピンとこないのも確かで、こういった著者の言論活動もフェアトレード運動も、コモディティ生産国の旧宗主国というヨーロッパ各国の歴史的立ち位置に基づくものなのかもしれないというのが正直な感想です。
前にも書きましたけどこれはほんとによい船戸。船戸にこれだけ熱中するのは10年前に読んだ↓
以来かな。
この3巻は満州国が建国され、関東軍による熱河侵攻までが描かれています。1,2巻のところでネタバレにならない程度の感想は書きつくした感があるのですが、今回は長男太郎の変貌ぶりが実に自然に描かれていて面白い。岸信介を代表とする戦前の革新官僚機構が戦後も温存されていて…ということはよく言われる話ですが、官僚という生きものをリアルに生き生きと描いているんですよね。その岸も満州国建設に大きく関わっているわけですが、次の巻あたりで出てくるのでしょうか。
"coffee a dark history"
この原題から、過去のプランテーションや現在も続く過酷な途上国での労働と安く買われるコーヒー豆をどうしても連想してしまいますし、もちろんそのような記述は多く、コーヒー好きのわたしは10杯コーヒーを飲んで徹夜した朝のような胃の痛さを覚えるのですが、フェアトレードが抜本的な解決策とは思えないのも確かで、答えを先延ばしにしてこれを書きながらやっぱりブルックスのコーヒーを飲んでいます。
しかしこの本で一番面白いのはコーヒーの歴史の部分ですよ。諸説あるコーヒーの起源の詳細な検討から始まって、それがいかにヨーロッパに伝わってゆき、世界の嗜好品の地位を確立するかが世界史上の事件と密接に関わっていることが重厚に綴られています。
例えばオスマントルコのヨーロッパ進出によってウィーンにコーヒーがもたらされる、あるいは二度の世界大戦が塹壕の中でも簡単に淹れられるインスタントコーヒーの需要爆発を生むなど。そのダイナミックな歴史には知的好奇心を大いに刺激されます。こういう本を読むときはコーヒーが進むんですよね。
コーヒーの友に最高なコーヒー本。少しの後ろめたさをミルク代わりに。